【事例紹介】日本精工株式会社(NSK)とETロボコンとの関わり(日本精工株式会社 須永 毅 氏)

1.企業としてETロボコンに関わる理由

1.1. ETロボコン参加の背景


●組込みシステム開発の現状
 最近の組込みシステムを取り巻く環境は,標準規格(A-SPICE,ISO26262等)や技術トレンド(AI)への対応が求められています.一方,開発スタイルは既存のソフトウェアをベースに修正を行う派生開発が中心となっています.派生開発は開発効率や製品の品質は向上しますが,エンジニアの成長という観点からすると「新たなものを作りだせない」 「新しい技術に挑戦できない」 といった状況を招き,必ずしも好ましい状況とは言えません.若手エンジニアには新たなものを作り出すためのスキルや経験が必要な状況でした.
●人財確保が困難
 機械工学系の学生にとってはNSKの知名度は低くないと思われますが,情報工学系の学生にとってNSKの知名度は高くないので世間に対してアピールをする必要がありました.

1.2. ETロボコン参加の目的

●大会
大会への参加目的は,若手エンジニア(制御開発,ソフトウェア開発)の育成です.
・スクラッチ開発を経験することで新規開発のスキルが向上する.
・AI(機械学習や深層学習)等の新しい技術に触れる機会がある.
   ⇒ 新たなものが作りだせる, 新しい技術に挑戦できる若手エンジニアが育つ.
●スポンサーシップ
 ・スポンサーシップへ参加することで,NSKの知名度向上に繋がることを期待しています.
●実行委員
 説明会や技術教育等で実行委員として参加者の前に出て行くことで,
 ・ソフトウェア開発の教育に力を入れている
 ・モデリング手法を積極導入している
 ・確かなソフトウェア開発力がある
 を認識していただき,NSKが就職先や転職先の選択肢となることを期待しています.
産学連携の取組み

2.産学連携の取組み

2.1. 産学連携における狙い


●学生との交流
 ・企業と大学が使命/役割の違いを理解し尊重しつつ,双方の活性化に資する相互補完的な連携を図って競技にチャレンジ,あるいは技術アドバイザとして学生を支援することで交流を図ります.
●リクルート面
 ・学生との交流による知名度向上,企業のイメージアップ ⇒ 求心力向上
 ・優秀な学生の発掘,教授とのパイプ作り ⇒ 優秀な学生を継続的に獲得
●目標

2.2. 産学連携での実績

2.3. 産学連携での成果


●学生の意見
 ・オブジェクト指向,UMLによるモデリングの理解が深まりました.
 ・実装より分析・設計モデリングの重要性を認識し,かつスキルが向上しました.
●NSK担当者の意見
 ・指導経験が積め,さらにモデリングに対する理解が深まりました.
 ・成功体験から,実際の開発業務に対してもやる気が向上し,成果が出てきました.
●双方の意見
 ・実際にプロジェクトを運営したことで,プロジェクトマネジメントの重要性を実感できました.
●リクルート面
 ・2016年度に産学連携チームで出場していた学生(当時4年生)が,2019年度新卒採用で内定しました.

まとめ

3.1. ETロボコン参加による成果


●スクラッチ開発を体験できる
 ・要求分析~テストと一貫した開発プロセスを体験することができるため,若手エンジニアの新規開発に対するスキルが向上しました.
●モデリングの重要性を理解できる
 ・ソフトウェアモデルを重視しているため,参加者は実装より分析・設計モデリングの重要性を認識し,かつスキルが向上しました.
●新たなものを作りだす機会を得る
 ・弊社の例では,UMLの設計モデルから自動コード生成する仕組みを構築し,ETロボコンのソフトウェア開発で実践し成果を得ることができました.
  ⇒ 自由な発想,それを実現できる環境がETロボコンにはあります.

3.2. 今後

NSKとしては,以上にあげたような成果が出ているため,ETロボコン活動に対して今後とも継続して参加と投資を行っていきます.

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