【事例紹介】エンジニアの想いが会社を巻き込む。デンソーがロボットコンテストに参加し続ける理由とは(後編)

本投稿は、ETロボコン参加チーム (株式会社デンソー)による活用事例のご紹介です。

オンラインで行う新しい開発スタイル

新型コロナウィルスの影響により、ETロボコンは2020年、全プログラムオンライン開催、シミュレータでの競技会となりました。すでにETロボコン常連チームとなっていたデンソーでしたが、参加するにあたりどのような影響があったのか、お伺いしました。

仕事だけでなくETロボコン活動も直接会って実施する事ができませんでしたが、逆にメンバーと直接会うことなく遠隔地にいてもスムーズに活動を進めるにはどうすれば良いかを考え、実践していく中で、今のご時世に合った開発の進め方(遠隔でのプロジェクト管理や構成管理のやり方、コミュニケーションの取り方)やそれらを実現するツールの使い方を身につける事ができたと思います。

当然ミーティングや日々のコミュニケーションは全てZoomやSlackで行うのですが、それに加えてオンライン上でプロジェクト管理(課題管理)や構成管理ができるクラウドサービスを導入して、時間や場所を選ばずにチーム開発ができる環境を作りました。更に、複数人でソースコードを実装(ペアプログラミング/モブプログラミング)する際には Visual Studio Live Share(コードの共同編集機能)を利用したり、ソースコードのレビューをする際には構成管理ツールのプルリクエスト機能を活用したりと、オンラインであっても開発に必要なコミュニケーションを取れるように工夫しました。結果的に、2021年のETロボコン活動は一度も直接会うことなく100%オンラインで活動を行う事ができました。

若手エンジニアに経験してほしい2つのポイント

IT人材が不足していると叫ばれる一方で、若手エンジニア一人ひとりの質の向上もまた急務となっています。優秀な人材を育成するために、若手のうちに経験してほしい2つのポイントを教えていただきました。

1つ目は、ソフトウェア開発における要求分析から結合検査までの一連のプロセスを全て体験する事です。大規模化してきた昨今の開発において、各自の業務の中で任されるのはソフトウェア開発の特定の工程の中の一部だけ(特定の部分の設計だけ、実装だけ、検査だけ、あるいは開発環境の整備だけ等)で、担当以外の工程を学べる機会はなかなかありません。ETロボコン活動を通じて一連のプロセスを全て体験することで、担当以外の工程の目線も持って開発を進めたりコミュニケーションを取ったりできるようになりました。

2つ目は、ETロボコンという疑似的なプロジェクト活動を通じて得られる成功(または失敗)体験です。
昨年もリモートでETロボコンの活動を進めていましたが、リモートでのコミュニケーションや進捗管理に課題がありました。
各自が今取り組んでいる事やその進捗状況(遅れや困りごと)が見え辛い状態で、遅れに対して対策も打てず、ずるずると締め切りまで進んでしまうこともありました。結果として予定していた機能ができていない、結合したらうまく動かない等の問題が発生しました。
その失敗から今年は課題管理・構成管理を徹底するようにしました。実施前に課題チケットを作成し、それをメンバーに割り当てて、各課題の進捗はチケットに常に記載していくようにしました。課題のチケットについても1~2週間以下で終わる粒度で作成して、進捗が分からない・課題が終わらない状態が続かないようにしました。
また、ソースコードも課題チケット毎に構成管理ツールで分離し、チケットが完了してからマスターデータにマージするようにして、マスターデータは常に動作する状態を維持できるようにしました。これらによって、誰が何をやっているかと、そこで発生した遅れ・困りごとをメンバー全員で共有して適切に対策を打ちながら進めることができました。
このようにETロボコン活動の中で毎年色々なチャレンジをしながら、失敗も、またそれを改善して成功に繋げるという事も経験できました。

社員の自発的な活動が、会社を巻き込む活動へ

社員の自発的な活動として取り組まれてきたETロボコンですが、今ではそこにとどまらず、会社にも認められ、スポンサーとしても参画する等、会社を巻き込んだ活動となっているようです。ETロボコンの活動が会社にどのような影響を及ぼしているのか、聞いてみました。

ETロボコンの活動を会社は応援してくれていると感じています。これまで幾度もデンソーの施設を会場として東海地区大会を開催してきましたし、東海大会やチャンピオンシップで入賞できた際には、毎回社内ホームページで取り上げられ、成果を称えられています。
職場では、社員のご家族向けの職場見学会で、ETロボコン活動の紹介や実際にコースを敷いて目の前でロボットを走らせて競技やモデルの説明をしたりもしていました。(※新型コロナウィルス流行前)。実際にロボットがコース上を走るデモは特にお子さんに好評で、社員のご家族向けにも職場の良いイメージを伝えることができたと思います。
参加しているメンバーには、会社説明会に来場してくれた学生さんに対し、社員の仕事やプライベートを説明する時間に、取り組みとしてETロボコン活動を紹介してもらいました。学生さんの中には社員がプライベートで取り組んでいる事や、仕事やスキルアップとプライベートの両立に興味を持っている方も多く、ETロボコン活動の取り組みを興味深く聞いてくれました。
今回振り返ってみて、ETロボコン活動への取り組みは社員が自ら考え成長する場であると共に、周りの人々も知りたくなり応援したくなるイメージアップにもつながる活動だと再認識できました。

ETロボコンの活動への熱意と想いは会社を巻き込み、若手エンジニアの育成に一役買っている、デンソーのなくてはならない戦略の一つとなっています。

参考リンク

株式会社デンソー コーポレートサイト
https://www.denso.com/jp/ja/

【事例紹介】エンジニアの想いが会社を巻き込む。デンソーがロボットコンテストに参加し続ける理由とは(前編)
https://www.etrobo.jp/denso_part1/

タイトルとURLをコピーしました