【事例紹介】『tadaima』におけるロボコンへの取り組み(情報技術開発株式会社 渕ノ上 将吏 氏 )

4つの大きな問題点

まずタイトルにある『tadaima』とは、弊社からロボコンに出場する際に使用している伝統的な冠名で、弊社の略称である『tdi』から名付けられたものです。ロボコンへの出場は古く2003年の第2回UMLロボコンから参加しています。基本は「新人育成」という名目で、東京に配属される新人は全員参加する自己啓発活動という形で長年参加してきました。近年の東京地区大会での成績は、2013年は34位(モデル:C-)、2014年は31位(モデル:C-)、2015年は34位(モデル:C+)と、毎年惨憺たる結果でした。我々のロボコン活動の何がダメだったのかというと、当時は大きく4つの問題がありました。
①業務との両立がつらい…まだ新人なのに残業。休日も潰れてしまう。
②周囲の理解不足・サポート不足…上司や先輩はロボコンに理解がなく、活動を支えてくる経験者も社外勤務。
③やらされ感…人によってはネガティブになってしまい、それが他メンバーや次年度にも伝わる負のスパイラル。
④ナレッジの引き継ぎ…経験や知識が形として残っていかない。
私が一番衝撃を受けたのは、ロボコンに参加したメンバーが「ロボコンやって得るものは何もありませんでした」と言い放ったことで、それを聞いて非常に残念に思ったことを覚えています。

方針の大改革!やる気重視の立候補制に

そこで、2016年に会社としてロボコンへの取り組み方針を大改革することになりました。
まずは社長をトップに据えたロボコン委員会を発足し、人事や総務、広報など、関係部署がサポートする体制づくりと、社内への露出を増やし、味方づくりを行いました。
そして最も大きな改革として、新人4名をロボコン終了まで、ロボコン専任メンバーとして正式にアサインするようにしました。人選もやる気重視の立候補制にしています。

チームの自律性を重視した活動

4人のチーム運営は何よりも自律性を重視し、「Scrum」を活用したチーム運営を行っています。
ナレッジもツールを活用して着実に蓄積するように気を配り、チームが持っていない知識や経験については、ロボコン公式イベントで実行委員へ突撃し、他社とも勉強会を共催することで、少しずつ積み上げていきました。
そういった取り組みを続けた結果、2016年は20位(モデル:B)でしたが、2017年は1位(モデル:B+)でCS大会に初出場し、バック走行で観衆を驚かせ、2018年はついにモデルでAを獲得し、CS大会でも4位になることが出来ました。
このように結果を残せるようになってきたロボコン活動ですが、我々にとってロボコンはあくまでも人財育成と捉えており、大会結果も大切ですが、そこに至るまでのプロセスをもっと大切にしています。
ですので、何事もナレッジや答えを安易に教えるのではなく、まずはチームで考え、主体的に行動していくように周りが導いています。

新人の成長、そして現場へ

また、ロボコンは要求分析から実装、テストといった一連の開発工程を全て新人達自身で考え、経験できる点が魅力です。最初はUMLもプログラミングもおぼつかない状態から始まるわけですが、モデルの締切など色々な段階を踏んで苦労しながら、最後は大会特有の一発の緊張感がある本番を経験できます。大会を迎える頃には新人は非常に頼もしくなっていて、毎年新人の加速度的な成長力を感じられる所が素晴らしいと思っています。
ある時、ロボコンのOBが、「現場でロボコンの時にやっていたやり方を実践したら、お客様にとても褒めていただいた」と語ってくれたことがあり、それを聞いて非常に嬉しく思いました。
新人をロボコン専任にし、中途半端な形ではなく全力で取り組んでもらい、最終的に「やってよかった」という言葉を引き出すことができる。これこそが一番の喜びだと感じています。
まだまだ、この先も『tadaima』はロボコンに全力で取り組んでいきます。他チームとの交流もどんどん行っていきたいので、是非よろしくお願いします。

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