【事例紹介】今回は、車載制御システム向けソフトウェアの開発を手がける株式会社システナの人材育成の取り組みをご紹介します。 システナでは、かねてより若手エンジニアの育成に力を注いでおり、その一環として人材教育の場として活用されているロボットコンテスト「ETロボコン」に2019年から継続して参加しています。
この活動は、会社公認の若手育成プログラムとして位置づけられており、技術力の向上だけでなく、チームワークや主体性の育成にもつながっているといいます。 今回は、ETロボコン活動を社内で推進する吉岡さんに、取り組みの背景や社内にもたらす効果についてお話を伺いました。

変革期、エンジニアに求められる自律した「攻めの人材」育成
株式会社システナは、IoT・ロボット・AI・自動車関連システムをはじめ、金融機関やWebビジネス向けのシステム開発、運用・ヘルプデスク、IT製品販売、クラウドサービスまで、企画・設計・開発・導入から保守・ユーザーサポートまでを一貫して提供するトータルソリューション企業です。
近年、自動車業界は「100年に一度の大変革期」とも言われる転換期を迎えており、その中心にあるのが「CASE(ケース)」と呼ばれる革新領域です。CASEとは、Connected(つながる車)、Autonomous(自動運転)、Shared(共有サービス)、Electric(電動化)の頭文字を取ったもので、次世代モビリティの方向性を示す重要な概念とされています。
システナでは、CASE領域をサービスの基盤と位置づけ、今後ますます需要が高まるこの4分野において、能力や成果に応じて自律的に成長できる育成環境を整備しています。さらに、技術革新と人材育成の両面から、未来のモビリティ社会に貢献する体制を築いています。
人事評価や給与制度においては、文理専攻や入社年数といった業務に直接関係のない要素を排除し、職域・職責・業務スキルに基づいた公平かつ透明性の高い評価を実施しています。評価結果は全社員に公開され、面談を通じて一人ひとりの成長の方向性を明確にする取り組みを進めています。
また、ロボットコンテスト「ETロボコン」への継続的な参加を通じて、社員が自ら考え、学び、行動する力を育む機会を提供しています。いわゆる大企業の枠にとらわれず、挑戦の
場を積極的に設けることで、各自の役割に応じた専門性と責任感を発揮できる“攻めの人材”の育成につなげています。

巨大自動車市場での挑戦と成長戦略、社員育成への取り組み
自動車業界は、長い歴史と規模を有する、日本の主要産業のひとつです。このような環境の中で、システナが完成車メーカーと直接取引を行えるようになったことは、まだ自動車とITの融合が今ほど進んでいなかった当時において、まさに“夢のような挑戦”でした。
この実現の背景には、スマートフォンや通信インフラなどの移動体通信分野で培ってきた中核技術の応用と発展があります。これにより、完成車メーカーのみならず、主要部品を供給するTier1企業との直接取引の機会を得ることができ、次世代の自動車や移動サービスを担う「モビリティ事業」のスタートラインに立つことができました。
現在、システナが展開するCASE領域(Connected/Autonomous/Shared/Electric)は、今後さらなる成長が期待される分野です。拡大する需要に応えていくためには、社員一人ひとりの技術力向上が不可欠であり、自らの行動が成果に直結する「ETロボコン」への参加は、理想的な育成環境として機能しています。
ETロボコンで磨く実践力と総合能力
システナでは、新入社員教育やOJTをはじめ、各種言語研修、設計教育、資格取得支援、プロジェクトマネジメント教育など、多様な学習機会を提供しています。こうした育成環境の中でも、ロボットコンテスト「ETロボコン」への参加は、実践的なスキルを磨く貴重な機会となっています。
ETロボコンでは、人員・時間・予算・資源等、限られた条件の中で成果を求められるため、参加者はUML設計力やプログラミングスキルを実践的に高めることができます。失敗を恐れず試行錯誤を重ねることで、技術力だけでなく、成功体験や深い学びを得ることができるのも大きな魅力です。
さらに、レビューや発表、Web会議での進捗報告、課題ディスカッションなどを通じて、相手に的確に伝えるコミュニケーション能力も向上します。ETロボコンで求められる多面的なスキル形成は、社員の自己研鑽と総合的な能力向上を促す、システナならではの人材育成の場となっています。
経験を力に、若手エンジニアが切り拓く次世代技術への挑戦
若手エンジニアにとって、ETロボコンへの参加は、デバイス制御の難しさを実体験できる貴重な機会となっています。毎年の振り返りでも「成長につながった」との声が多く寄せられており、技術力だけでなく挑戦する姿勢の促進にもつながっています。
システナがチームとして初めて参加した2019年は、若手社員の経験値向上を目的に、外部イベントへの挑戦を通じて成功・失敗の両方を体験することを重視しました。失敗を恐れず挑戦を継続した結果、2023年にはプライマリクラス地区大会で優勝を果たし、2024年にはプライマリクラスとアドバンストクラスの両方でチャンピオンシップ大会への選出、さらにプライマリクラスでは準優勝という成果を収めるまでに成長を遂げました。
これらの成功体験は、若手社員が自らの成長を実感し、技術力と自信を深める最適な機会となっています。ETロボコンで得た成果をきっかけに、アプリ開発やAI関連のワーキング活動など、外部イベントへの積極的な参加へと意欲が広がっています。

就活生からも支持される実践型人材育成
採用活動においても、ETロボコンは、候補者の関心を集める強力なアピールポイントとなっています。採用担当の小路氏によれば、「採用面接でETロボコンに関する質問を受ける機会が増えてきました」とのことで、技術力や育成姿勢が企業イメージの向上につながっている確かな手応えを感じているといいます。
毎年、システナでは就職活動中の学生を対象に、商品開発プロセスの面白さややりがいを体感してもらう場として、ソフトウェア開発をテーマにした体験型インターンシップを開催しています。インターンでは、ETロボコンに参加経験のある社員が会社を代表して参加者を直接サポートし、自らの経験を通じて技術に触れる喜びや挑戦の面白さを伝えています。
こうした取り組みやインターンを経て社風や業務内容に魅力を感じ、採用面接に応募する学生が年々増加しています。ETロボコンを軸とした技術力と挑戦を応援する社風の発信が、次世代の人材獲得にもつながっています。
経験を経て会社を牽引する人材へ
ETロボコンで培われる課題解決力やチームワークは、システナの若手エンジニアが業務の中で多様な分野で活躍する原動力となっています。こうして技術力や協働力を実践的に磨いた社員は、プロジェクト推進や新たな価値創出に貢献し、社内の中核人材として着実に成長を遂げています。システナでは、このような成果につながるETロボコンへの参加を通じ、社員一人ひとりが主体的に挑戦できる環境づくりに力を注いでいます。競技を通じて得られる経験は、単なる技術研鑽にとどまらず、組織の活性化や企業文化の醸成にも寄与しており、同社の持続的な成長を支える重要な柱となっています。
こうした経験は、個人のスキル向上にとどまらず、社内外にポジティブな影響を広げています。就職活動中の学生を対象としたインターンシップでは、ETロボコン経験者がメンターとして学生をサポートし、自らの挑戦を通じて得た学びや技術の面白さを伝えることで、開発の魅力を実感してもらう機会を創出しています。このような取り組みは、学生の企業理解を深めると同時に、採用活動や企業イメージの向上にもつながっています。
今後もシステナは、ETロボコンを通じた挑戦の場を継続的に提供し、主体性と専門性を兼ね備えた人材の育成に取り組んでいきます。技術と人の可能性を広げるこの活動は、未来のシステナを形づくる力強い原動力となるでしょう。