ソフトウェア開発と情報セキュリティでグローバル展開をする株式会社CIC
前回は、ETロボコンを若手育成活動の一環として活用されている効果についてうかがいました。
(前回の記事)「若手エンジニアの育成にロボコンを活用し続ける理由とは」
CICでは、新人研修の一環として2022年からETロボコンのエントリークラスに参加しています。
チームのメンバー構成は、前年に参加したメンバーがサポート役としてチームに残ることで、「教える側」と「教わる側」の双方を実践的に経験することにより、若手エンジニアの成長する機会を提供しています。
今回は、ETロボコン参加二年目の2023年に総合優勝を果たした際のチームメンバーでもあり、
ETロボコン2024のCICチームのサポート役として活躍するメンバーに、座談会形式でその当時の道のりを振り返って頂きました。
(座談会参加者)
2022年メンバー代表:重冨さん(2020年入社:開発担当)、安藤さん(2021年入社:モデル担当)
2023年メンバー代表:アティークさん(2023年入社:開発担当)、清澤さん(2023年入社:開発担当)
※本文中では敬称を略させていただきます。
ETロボコン参加への課題、想定していた効果
ー ETロボコン2023、エントリークラス総合優勝おめでとうございます!
(清澤) ありがとうございます。
ー 総合優勝したとき、社内の反応でいかがでしたか?
(アティーク) やはり、所属部署の先輩方が喜んでくださいました。
(安藤)社内でも注目を集めるようになり、会社ホームページの社内ニュースにも掲載されて、同期から「すごいね」と連絡が来ました。
ー ETロボコンへの参加を決めた際、どのような課題を想定していましたか?
(重冨) ETロボコン活動では「プロジェクトマネージメント」と「テクニカルスキル」がポイントと考えていました。2022年のチームは新人と実務経験のあるメンバーで構成されていたため、課題が発生した際のアプローチ方法は理解していました。しかし、2023年のチームはメンバーが新人だけだったため、課題に対して、どのようにアプローチし、誰に頼ったらよいのか分からないことが多いと感じていました。
課題が発生した際に誰が解決に導くのかをサポートし、しっかりと面倒を見る必要があると考えていました。
(清澤) 2023年チームには2つの課題がありました。1つ目は、メンバー全員が集合研修を終えたばかりの新人だったため、UMLやC++、制御工学に関するテクニカルスキルが不足していたことです。
2つ目は、地方拠点のメンバーがいたため、チーム間のコミュニケーションが難しいと想定していました。
ーコミュニケーションが鍵ということがわかりましたが、この部分で気を付けていたことはありますか?
(清澤) 連携には非常に気を使いました。モデルと開発の担当を縦割りで分けていたので、担当間のコミュニケーションが重要だと考えていました。
特に注意した点は、地方拠点のメンバーとリモートで連携をしていたので、できるだけオープンな場でやり取りをして、みんなで事柄や共有事項を連携できるように気をつけていました。
(重冨) 改めて振り返ると、初めは毎日実施していた定例会の時間だけで話し合い、アイデアを交換する程度でした。しかし、次第に定例会の時間以外でも相談し合うようになり、徐々に話す時間が増えていきました。最終的には、チームのコミュニケーション力が非常に良くなったと感じています。
(清澤) えー。最初そういうイメージだったんですね。
たしかに最初は定例会ぐらいでしか話さなかったかもしれないですね。
チーム開発の様子
ーETロボコンの活動についてですが、具体的にいつ、どのようなタイミングで、どれくらいの時間を使って活動していたのか教えてください。
(重冨) 新人は研修の一環として業務時間内に活動を行いました。サポートメンバーは、時期によって異なりますが、業務時間外に平均して0.3人月程度の開発を行っていました。
(安藤) ETロボコンで優秀な成績を収めるためには、モデルが重要です。モデルシート提出直前には、社内の所属プロジェクトから許可をもらい、2週間ほど業務時間内で作業を行ったこともありました。
ーチームをサポートする立場で気を付けていたことはありますか?
(安藤) モデルを見てアドバイスすることが多かったのですが、適当なことは言えないため、本で勉強し直してからアドバイスをしていました。
(清澤) 現在、2024年チームのモデルレビューを担当していますが、実施前に必死に本を読んで勉強しています。サポートする側になってわかったことですが、チームメンバー以上に勉強しているかもしれません。
ロボコン参加で得られた効果
ーエントリークラスで総合優勝できた勝因は何だと考えますか?
(アティーク) 勝因はコミュニケーションに尽きると思います。
チームでは最初の2~3か月間、毎日定例会を行い、状況を整理し、やるべきことの方針をしっかりと組み立てて進めました。また、地方拠点のメンバーともリモートでしっかりつなぎ、コミュニケーションを重ねたことが総合優勝に結びついたと考えています。特に、清澤くんのような優秀なメンバーが活躍してくれたことも大きかったです。やる気に満ちたメンバーがいたことで、他のメンバーや自分のモチベーションも高まり、みんなで頂点を目指して全力で取り組み続けたことが優勝につながったと思っています。
(安藤) 私は、モデルをうまく作成できたことが大きな勝因だと思います。モデルは全員で何度も検討を重ねて作成しました。密なコミュニケーションを取り、全員で協力して進められたことが一番の勝因だったと思います。
ーETロボコンの特徴であるモデル。作成する際に工夫した点は何ですか?
(安藤) そうですね、とにかく読みやすさを最優先にして作成しました。
モデルは人が読んで審査するものなので、読む人にとってわかりやすいものでなければならないと常に意識していました。
モデルにはサイズと枚数に制限があり、実際にA3サイズの用紙に収めようとすると、どうしてもモデル図のボリュームが大きくなりがちで、紙面に収めるのが難しかったです。そこで、できるだけ文字を小さくしないようにしつつ、可能な限り見やすくなるように全員で検討を重ねました。審査の際にはモデルが印刷されることを考え、実際に印刷して確認し、とにかく見やすくする工夫をしました。
ー総合成績で優秀な成績を収めるには、競技における走行タイムが重要ですが、その中で、良い走行タイムを出するために工夫し、エントリークラス大会で1位の走行タイムを記録。唯一11秒台を達成したと伺ったのですが、具体的にはどんなことをされたのでしょうか?
(アティーク)そうですね。この成績を収めることができたのは、後ろ向きのまま走行してゴールする戦法を採用し走行タイムの短縮につなげたことです。このアイデアは清澤くんが出してくれました。検討した結果、チームの最終戦法としてひたすら調整を続けました。後ろ向きで走行し、尻尾も使うなど、使えるものはすべて活用してタイム短縮に注力しました。LコースとRコースそれぞれに分けてプログラムを作成し、調整の結果、Rコースで最速タイムを記録しました。細かい調整を行うことでリスクを最小限に抑え、最終的な走行タイムにつながったのだと思います。
―LコースとRコースのプログラムは、左右対称じゃないんですね?
(アティーク)はい、そうです。コース上に設置されているオブジェの位置が異なっていたため、同じ走行でもコースをずらす必要がありました。その結果、調整値も変わり、完全に左右対称にはなりませんでした。
ETロボコン参加者の活躍
ー清澤さんは、今年の新入社員研修の講師をサポートする立場としても活躍されていましたね。
(清澤) はい、やはり人に教えることには、ETロボコンの経験が活かされています。新人社員研修に参加しているメンバーが、ETロボコン2024のエントリークラスに出場することになりました。実は、その参加チームでもスケジュール管理などのサポート役を担当しており、ここでもETロボコンの経験を活かせていると考えています。
ー重冨さんは、CICの大型プロジェクトでサブリーダーとしても活躍されていますね。
(重冨)はい、プロジェクトマネージメントやスケジュール管理の部分では、ETロボコンの経験が活かされていると思っています。
―最後に、ETロボコン2024の目標は何ですか?
(アティーク) やはり今年参加している新人チームによるETロボコンエントリークラス総合優勝2連覇を目指しています。僕自身、参加チーム時代に培った「チーム開発」や「設計技法(モデル)」のスキルを活かし、新人たちを全力でサポートし一緒に2連覇を達成したいと考えています。
新人研修から始まり、翌年には指導者としてETロボコンに挑戦しているCICチーム。ETロボコンへの挑戦は、技術的なスキルだけでなく、チームでプロジェクトを成功させる社会人としてのスキルを学ぶ貴重な機会となっています。新人期間を経て、先輩としてサポート役に回っても学び続ける姿勢は、頼もしい人材へと成長している証でもあります。
人材育成の理想的な循環を垣間見ることができる事例でした。
2024年の活躍も楽しみにしています。
参考リンク